家が燃えた

Kohei Mikami
3 min readNov 2, 2017

ピュウンピュウンピュウン!

午前2時、聞いたことも無い音によって突然起こされた。例えるなら車の盗難防止用のアラームだろうか、どうやら外から聞こえてくるようだ。うるさくて眠れない、というほどのうるささでもなく我慢すれば眠れそうだった。発生源を調べるのが面倒だったのでそのまま寝ることにした。

15分後、やっぱり眠れない。「ピュウうううううううううん!」今度は消防車の音が聞こえて来た。さすがにうるさい。と、窓の外を覗いてみるとちょうど消防車が家の前を通り過ぎようとしていた。「お、この周辺で火事でもあったのか、それは騒々しくもなるな」と物凄い睡魔に襲われる中漠然と思っていると、その消防車は家の前で止まったではないか。

「ふえー!この近所で火事か!それは大変だ!」

よく外を見ようと窓を開けると今度は消防車から人が出て来た。「これがイギリスの消防士かー、オレンジ色の服着てないんだなぁ。やっぱり日本とは違う!」と感心しているとその消防士が一直線にうちのマンションに向かって走って来て、建物の中に突入して行った。

「・・・あれ、燃えてるの俺の家やんけ!」

さっきから鳴ってるよく分からないアラーム、よく聞くと外からではなくマンションの廊下で鳴っている。これ火災報知器の音か!無知って怖いな!てか、音が小さすぎる。ここは2階、例え燃えてて逃げ道が無くても最悪窓から飛び降りればそこまで怪我せず脱出はできそうだな。瞬時に考える。窓からマンションの入り口を見ると何人かは外に避難しているようだった。

そもそも本当に燃えているのか?煙も何も見えない。同じような経験は小学校のときに誰かがいたずらをして「消火栓」って書いてあるボタンを押したとき以来だ。正直外寒いし最悪飛び降りればいいからもっかい寝ようかなあ、と思っているとやっとルームメイトが起きてきた。何が起こったのか聞かれたので「消防車が来ててうちのマンションの火災報知器が鳴ってる」と答えるとすぐ着替え始めた。やはり外に避難するらしいので一緒に避難することにした。

階段を降りると物凄い焦げた感じの臭いがした。「あ、まじで燃えてるんだ」と焦った。同じように音が小さすぎる火災報知器の音にやっと気づいた人たち数人と一緒に外に出た。燃えてるのはわかったのだが、おばあちゃんがロビーのめっちゃいい椅子に腰掛けてのんびりしてるし、こんだけ焦げた臭いしてるのにこの時間に飲んだくれて帰って来た人たちは気にせずマンションの中に突入していったのだった。

外には30人くらいの人がたむろしていた。僕は逃げ遅れたほうかと思っていたけど、僕の後から出てくる人もたくさんいた。外から見た感じでは、煙も見えないし炎も見えないし、何も起こっていないように見える。そもそも、消防士が消化活動をしていないところを見るとそこまで切羽詰まった感じではなさそうだ。周りの人たちもだるそうに建物を眺めたり携帯を眺めたりして単に時間を潰していた。

午前3時、叩き起こされてから1時間、やっと消防士の人が大丈夫だから中に入っていいよ、と言ってくれたので部屋に戻った。噂によると1階の電気系統のどこかが悪くて煙だか火が出たんだそうな。ロンドンまで来て、生まれて始めて本物の火事らしきものに遭遇したのであった。あー、びっくりした。

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